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「陣痛っぽいのが来ている…」
4/24 0:00。
「これから帰る」コールの返事が突然のこれ。
一応予定日は4/28だったのですが、夫婦共々「早まりそうな気がする。」となんとなく思っていたのと、体調管理はズバ抜けて敏感だった妻のセリフだったので「あ、これくるな。」とすぐに分かりました。
急いで帰宅して「どう?どう?」責めにも落ち着いていて、まだまだ慌てるペースじゃないから風呂に入ってきてと。
ただ、これもう陣痛だから風呂出たら明日の準備して病院行こうって話になりました。
タイミングによっては1人で病院に向かわなければならなかったので、「マタニティタクシー」なるものを事前から登録。
陣痛等を分かってくれているドライバーさんが登録した病院に、陣痛が辛い状況であってもエスコートしながら連れていってくれるといったサービスです。
ほんと便利。
マタニティタクシー
0:00くらいから始まりだした本格的な陣痛。
最初は痛くても電話出来たりしたのですが、タクシーで病院に着く頃には陣痛時にはうつむいてしゃべれないレベル。
到着。
ちなみに我が家が選んだ病院は恵比寿にある「厚生中央病院」でした。
プロポーズ、結婚式と続いて出産まで恵比寿って…ご先祖は七福神かな。
妻が今の状況を診断されてる間に入院受付へ。
人によっては陣痛のペースで1度家に帰らされるパターンもあるらしい…うむ、過酷すぎる。
出産レベルに特殊な状況じゃないと見ない光景がリアルですよね。
陣痛室に戻って時刻は4:00。
もうこの頃には痛みがきてる時は喋る余裕もなく、静かな病室に「フッフッフッ!」と荒い呼吸が響くのみ。
子宮口といった赤ちゃんの出口が10センチになると分娩室にGOなのですが、この時点では3〜4センチ。
あとは陣痛と共に子宮口の広がりを待つばかり。
初産だと1〜2時間に1センチ感覚で広がっていくので、10〜15時間で生まれるのが平均みたいです。
この時間が、とてもとても長い。
陣痛と共に赤ちゃんも下に下がってくるのですが、それに伴って痛みももちろん増えていきます。
子宮口は5センチ。
ペースもいいし、逆算して昼頃の出産かもという雰囲気。
あと少し頑張ろう、何も出来ないけど。
この時に男性が出来ることは痛みでリキむ体をフーフーのかけ声でリラックスさせる事と、痛みのある部分を圧迫して痛みを緩和させてあげること。
3分に1度くる陣痛と共に繰り返されるこの作業が、時間が経つのをすごく早く感じさせます。
2回目の診断。
7〜8センチまでいってるといいが結果や如何に…
ここで緊急事態が発生!!
まさかの5センチ!
2時間前と変わっていない。
広がっていないという結果よりも、この2時間苦しみ続けた妻の時間が無駄だったということがとてもショックでした。
ただ、意外とよくある事らしいので、今度は強制的に広げるために陣痛がきていないタイミングでスクワットしたり、足踏みしたり、とにかく骨盤を動かせと。
ふむ、鬼教官。
と思ったけど、ラストスパートでくる陣痛はこんなもんじゃないみたいなので、超えねばならぬ壁なんですね…。
立ったタイミングでより早くくる陣痛に苦しみながらも出来る範囲で骨盤をちょろちょろ動かす妻。
チョロチョロすぎて(それ骨盤動いてるのかな…。)と思ったけど言えない!情が邪魔をする!
それでも声かけあって足踏みしたり、腰を回してみたりと次の診断までひたすら続ける。
この頃には「診断しますね〜。」の声が天の声に聞こえてくるんですよね。
まさに蜘蛛の糸。
昼過ぎになり診断再び。
…ドキドキ。結果や如何に…。
そして告げられた診断結果。
5センチ!またまた変わってない!!
ぐうぅぅぅぅぅ。
崖から突き落とされたような衝撃でした。
「促進剤いきましょう。」
ここで出された提案。
確かにこの時点で妻はもう30時間くらい寝てない状態。
赤ちゃんも今はまだ元気だけど母子ともに体力勝負なところもあるので、その手でいくことにしました。
陣痛促進剤の前に本当に赤ちゃんが促進した状態で産まれる位置にいるのかどうかをレントゲンでチェック。
問題なしならそのままいきます。
あと少しだけ頑張ろう!!
今度からいい子になるからこれ以上はせめて普通に事が進んで欲しい…。
そして、どんどんと投入される促進剤。
長い時間が経っているはずなのに、そんな気が全くしない…。
段々強くなる陣痛に対して既に35時間以上寝れていない体は限界を迎え始めて陣痛と陣痛の間の3分で眠りに落ちてしまう。
目も口も半開きで、髪もボサボサ。
きっと今日本で一番ブサイクな顔で寝てる。
けど、一生忘れることのない最高に尊敬出来る寝顔。
その時その時のベストな体勢に導いてくれます。
だんだんと促進剤も効いてきて陣痛はピークに向かいます。
曰く「発狂するくらいの痛みがちょうどいい。」とのこと。
もうなんとでも言ってくれ〜。。
ベッドの脇から柵を出し、それに捕まり呼吸を飛び越えて唸り声を出す妻。
痛みには弱いけど我慢強い性格。
そんな子が3分に一度、今までに聞いたことない声をあげて苦しむ。
こんなに心を突き刺す光景って今後の人生であるかな。
もうここまで来ると可哀想とか、頑張ろうなんて思いも生まれず、ただただ自分のやれる事をやるのみ。
この時出来るのは拳を作って尻の穴を突き上げるようにお尻を押す事。
それと同時に背中や腰をさする。
あとは呼吸をなるべくエスコートしながら何度もくる波を「診断します」が聞こえるまで繰り返すのみ。
もう何度目?の「診断します」。
きた。きたきた。
促進剤を使いだして2回目の診断。
診断している間は男性は視界を隠したベッドの横でソワソワ待つのみ。
ふと手を見ると
これだけの力で押して、やっと紛れる陣痛の痛み。
今生きているってことは、自分もこういう痛みのもとに産まれたんだから親にも感謝ですね。
分娩室行きます!!!
遂にきたーーーー!!
突如きた分娩室宣告。
もう2回は聞き直しましたよね。
分娩室?分娩室?行けるの?
隣にあるくせに全然開いてくれない分娩室の扉。
やっと開いたよー、あと一息。
もう既に20時間以上。
起きてる時間は35時間越え。
本当にあと少し。夜はゆっくり眠ろと声かけて、いざ。
ここまでくると男性は女性の頭側に立って声をかける、手を握る(ちゃんと握って踏ん張るためのバーがあるので割と邪魔)、、ぐらい。
お股側は衛生面で立つことは出来ません。
多分出来ることは全部やった。
ここまでくるとあとは最終ステージに立つ妻を応援することしか出来ない。
悔しさもあるし、何かそれでもしたい思いもあるし、訳も分からない涙が生まれる前から出そう。
専用の台に乗り、3回に分けて「吸って、息を止めて、ひたすらリキむ!!」を繰り返します。
この時の赤ちゃんってなるべくお母さんの体を傷つけないために手を前でたたんで、頭を骨盤に自力で収めて、頭が出たと同時に体をひねるんですって。
本能よ偉大すぎか。
吸った酸素がそのまま赤ちゃんのパワーになるので酸素マスクをして、力まない時は深く呼吸する。
波がきたら全力でイキむ。
まぶたには力みすぎて内出血を起こした血管が浮かび、おでこには力みが終わっても取れないほどのシワ。
動物としてすごいきれい。
意外とそんな事思えるほど、分娩室に入ってからは冷静でした。(後から聞くと自分だけだったらしいw)
ただ、何度チャレンジしてももう体力も限界に近づいてきていて、イキみに最後のひと踏ん張りが足りないため赤ちゃんが引っ込んでしまう。
よく出産を比喩するときに鼻からスイカって言いますが、遂には鼻の穴の部分をハサミで切り出します。
本当のクライマックス。
あとは2人で呼吸を合わせて出てくるのみ。
完全に男1人と母子2人。
ここにきて、どうしても越えられない男女差をひしひしと感じていました。
見て見て!!
急に響いた声の先を見ると
髪の毛、頭、首、本当に1回転して…体ーーー!!!
出たーーーー!!!
我が子爆誕!!!
自然と涙ポロポロ!!!(赤ちゃんじゃなくてわしな。)
生きてる事を主張するように、産声をあげながら新生児用ベッドに運ばれていきます。
「いいよ!見ていいよ!」
言われるがままに近づいた先で姿を見せたのは
我が子という実感よりも「人から人が産まれる」といった奇跡の前に呆然。
泣き声で我にかえると同時にだんだんと押し寄せる「よく頑張ったね」という感情。
手も足もあるし、指もちゃんと10本生えてるし、それぞれにはちゃんと爪まで生えている。
すげーな人って。
赤ちゃんが生まれる神秘と、それを産みきった妻の偉大さ。
これが押し寄せるいろんな感情の波の果てに生まれたものでした。
あれ、妻どうした?
切った鼻の穴縫われていました。
いや、もちろんとても痛そうでワンワン言ってるのですが、産まれた安堵感でそれすら微笑ましく見えました。
2906g、47.5cm。4/24,19:10。我が子誕生。
いざ我が子を目の前にして本当に思った事。
もちろん、産まれてきてくれた喜び、母子ともに無事でいてくれた事への感謝。
思うところはたくさんあるのですが、最後に思った感想。
「終始一緒にいれてよかった。」
これに尽きます。
実は夫婦共々に接客業に携わり続けていたので、「予約優先」というのが2人のあいだに自然と出来たルールでした。
なので、最初は「せめてお産だけでも。」という、全部は無理でも生まれる瞬間は立ち会いたいという気持ちでした。
それが、いざ出産というものを一部始終思い返すと、本当によかったなと思うのは、分娩室での出産よりも長い長い陣痛を共に出来た事。
今までに見た事のない妻の苦しむ姿。
自分の手や声で10の痛みがせめて9や8になってくれたら、それだけでありがたい。
逆にあの長い時間、妻が1人で苦しんでいたと思うと一生後悔していたと思います。(そうなってた場合、知る由もなかったけど。)
そして、実は予約の兼ね合い上、丸一日一緒にいれる日って4月の中でもこの日だけなのでした。
ぼくが妊娠やら予定日やらを、ブログに書くわ店で話すわしているうちに多くのお客様が「私の予約の時に出産が重なったらそちらを優先してください。」と言ってくださり。
この日だけはそんなお客様で埋まっていた日でした。
新規の方や出産の事を知らない方だったら無理矢理に私情を挟む訳にはいかなかったので、仕事を優先する予定でした。
予約の日にちをズラしてくれた数名の方々、本当にありがたい。
おかげさまで墓に潜るまで忘れる事はないであろう体験をすることが出来ました。
今まで2人で歩いてきた道はこれからは3人。
妊娠がわかった日からいつか来るだろうと覚悟を作り始めていた日が本当にきた。
息子も世に生を受けて1日目だけど自分も父親になって1日目。
お互いに四苦八苦しながら成長して、お母さんを守れるようになろう。
2017,4,28。
本当に忘れられない日になった。
ようこそ。
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